Diggy-MO/PTOLEMYについて(2019/6/3)

洋平です、どうも。

日本語ラップブログ書いてみないかと言われキーボード叩きました、
最後まで見ていただけると嬉しいです。


題材曲
「Diggy-MO/PTOLEMY」
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PTOLEMY
Sony Music Labels Inc.
2018-11-07


日本語ラップと言えば、開口一番に「俺は」で始まり、「あいつは」「俺の街は」と続くようなイメージです。バックボーンを語る為にラップしていると思うのでそれであれば100%の答えであると思います。

対して今回選んだDiggy-MO’というラッパーは「ア アラララァ ア アァ」が代名詞であり、公式には巻き舌と高速ラップが所謂”ウリ”とされています。ですが、私的にはラップ技術もさることながらその歌詞と世界観がとてつもなく好きなので今回題材曲を通して伝えていければと思います。それでは歌詞を見ていきましょう。

 

1st verce——-
hey, 吐露したりしてて オレらまだ角
稲妻まとって spit i’m a trouble 野郎
yellow fellow mellow 仕立て上げろ
タフじゃなきゃな bro. 生き抜いた fool who?
you 行き場もなく on the corner 唯一
timberland nike shoe 信じる we’ll be cool
———–|

いきなりもDiggy節が炸裂しています。「吐露して、角?稲妻纏って?」うん、よくわからない、というのが正直な感想でしょう。Diggyのリリックは直感的な表現であり単語を並べることが多いです(助詞・助動詞が少ないです)。そのため、単語の間を補完する必要があります。

この1verceだけでは答えは見えてきません。しかしながら歌詞を読み解くとイメージが浮かんでくるというのがこの曲のいい部分です、ラップ技術のみに頼った曲ならば相当詰まらない曲になってたでしょう。

余談ですが、私は世界観がある曲(歌詞)が好きです。自己紹介じみてて日記を垂れ流してるような曲は嫌いです、曲の中のメッセージ性や、どういう思いを持って作ったのか考えるのが僕なりの音楽の楽しみ方です。要は作品の中で聞き手を意識できてるかってのを感じる瞬間が好きってことです。本題に戻ります。

1st verce——
ねぇ おまえ世間ならとうに enemy
降りかかる火の粉 job はらえはらえ
名声だ 名声に餓えた連中だらけ
プライドを世界一にしてやら ややや やれ
ガタきた scene ガソリン・ドリーム
少しだけ laughin’ mama いやいやでもまだ screamin’
———-

DiggyはSOUL’d OUT時代の5th album頃より”you”と”I”の位置付けを重宝してるように見えます。時には自分と友人だったり、時には自分と過去の自分だったり(如実に表れているのがSUPERFEEL(5th album収録)ですね)
PTOLEMYも”you”と”I”が多用されており、どのようなテーマで語りかけてるのかのヒントになってきます。

今回の”I”部分はDiggy自身という認識です、理由はここまで来てそれ以外の情報がないからです。また、多くの楽曲で”I”は自分自身として使用しているので今回もそうだと考えています(“I”が女性の場合の曲もありますが、その時は一人称が「わたし」になってたりします)。

すると最初の歌詞についても少しずつわかってきます。「I’m trouble野郎」は皮肉めいてますがカッコいい言い回しですね、こういうところが好きです。「trouble野郎」は1st album収録の「サムライズム」でも使用しています、相当自覚があるようです笑

「世間ならとうにenemy」「オレらまだ角」「行き場もないon the conrner 唯一」、要は私と貴方(総じてオレら)ははみ出し者ってことですね、しかしながら「唯一」のはみ出し者ということでプライドは高いようです。

「名声だ 名声に飢えた連中だらけ」「降りかかる火の粉 job はらえはらえ」どうやらオレらは周りから何かしらの圧力をかけられているように見えますね、また、それを鬱陶しく思っている。因みにこの部分のフロウは曲随一にカッコいいです。

hook——
あしたなら神 アルマゲスター
みてみたいな マルの外側から
あしたなら神 アルマゲスター
してみたい 夢みたいんだ yellin’

PTOLEMY
———-

やっと読み解けたと思いきやhookで突き放してきましたね。往年の曲はhookでわかりやすい言葉を並べていましたがPTOLEMYは異質な構成となっています。まぁ、「あっぷあっぷ up and down で hold out」も分かりにくいと言えば分かりにくいですが笑

1st verceで角やcorner、名声に飢えた連中とのワードから「マルの外側」とは人の集合体の外側を指しており、自分や相手との関係を俯瞰して見てみたい。という意味にとれます。自分を俯瞰して観察してかつ夢を見ていたいということでしょうか。

Diggyはよくリフレイン法(曲中で決まったフレーズを繰り返す)を使っており、今回の曲もそれに該当します。耳に残る曲を作るにあたって、”繰り返す”ことは最大の効果になると思います。

また、”繰り返し”は覚えさせる他に強調にも使用できるので曲中で言いたいことがある時に入れると良いかと、最終最大系は”ラララ”です。メロデイラインも同時に覚えてもらえるのでラップ曲に限らず曲を覚えてもらいたければ”ラララ”を入れるべきです。

少し脱線しました、戻りましょう。

PTOLEMY(トレミー)とは古代ローラ時代の権威学者であるプトレマイオスの英語読みになります。プトレマイオスは地理学者、天文学者であり、著書としてアルマゲストという本を執筆しています。タイトルにもある通り今回はプトレマイオスを基軸に置いた歌詞になります。

ここで仮説として”you”をプトレマイオスとしてみましょう。PTOLEMYという題名ですし自身とプトレマイオスの曲なんでしょう。

しかしながらyouがプトレマイオスだと少し矛盾が生じます。権威として言われたプトレマイオスがはみ出し者?降りかかる火の粉とは一体?、史実から見るとあまり腑に落ちない感じですね。これらを探る為に次を見ていきましょう。

2nd verce—–
手厚く扱ってくれ you can’t understand me
grey その街に 赤い apple みてぇに
見ろ 聴け ハートで feel 手で触れろ 好きに
violently 普通じゃねぇサ take it too far
the color that you saw is fake bring it up to par
imitation on parade not paris y’all just parasite
fuck your card softie playin’ hard yarr
head light wild dear crash silence got you caught off guard
変わる場面 i’m lovin’‥
lovin’ scene4 i’m tryin’ to be unravelin’
this the rhyme travelin’ おしゃぶりん god
sweepin’ a chime-chimney livin’ it up liberty
賛美歌のようなコーラス 回る vision アスピリン
life’s 銀河 伝ってまた音色ひとつ disappearin’
i was given 知の探求の道できいた
まるで癒されて そうさ 宙に浮かんだような気分
——-

先に言いますが、ここでの”you”は1st verceと異なります。「you can’t understand me」「the color that you saw is fake」と明らかに軽蔑した言い方になっています。ではこの”you”がプトレマイオスなのか、それも違いますね、ならばhookであんなにも強調しないでしょう。Diggyは明確に名指しでdis曲を作ったことはないです。(disられたことはありますが笑)

1st verceと「y’all just parasite」からこの”you”が「名声に飢えた連中」ということが適切でしょう。そんな奴らにウンザリした”I”は「
i’m tryin’ to be unravelin’
this the rhyme travelin’ おしゃぶりん god」
ここでの表現方法がたまらなく好きです。「travelin’ おしゃぶりん god」とは「生まれてから死ぬまで(天に召されるまで)の時間」という考え方が正しそうです。韻も踏んで意味も通すのは簡単ですがそれに詩的表現を加えられるのがDiggyの”ウリ”だと思います。

2nd verceを要約すると「俺はお前らに理解できない場所にいる、見えてるものが違うんだ。お前らが妬んでる間に俺はライムに生まれてから死ぬまで身を投じ音を感じ、宙に浮かんだような気分を楽しんでる」といったところでしょうか。

次に3rd verceですがここである疑問が。プトレマイオスはどこにいったのか。hookで強調したプトレマイオスですが1st/2nd verceだけではDiggy自身の考え方しか見えてこないです。思想に共鳴したのか、ならばもう少し彼の行動や言葉にフォーカスしていいものですが。

答えは3rd verceに潜んでいました。それでは読んでいきましょう。
(因みにこの曲の「ア アラララアァ ア アァ」ポイントは2回目のhook終わりの02:14程です、よく聞いてみないとわからないので上級者向けになります)

3rd verce—-
空を切る 描く 天界 そう ひかりの中
world circle ‘round me all the divas start to sing for love
この音はメッセージ たった数分かの未来
そう 歴史に対して己「聖」の文字刻んで
まだ just waitin’ for “when” みてる cycle ends ただ
そして同じ場所で it begins so we’ll start again
sip up! hennessy で乾杯サ
プレ・ソクラテス ヘラクレイトス タレス waver ever
i will say this 確かに i will say this twice
真空ミュージック 誰 vocal channel やれ criticiZe
roll up! roll up! synchroniZe2
迫り来るは波のグルーヴ その無数の笑みに涙
解放され 煌めく 胸に starZ 宇宙
向こう側 天才 境界線 believe そうさ必要な強さ
あしたなら神 アルマゲスター
ほら i’m the one they call “loopy” また血を流すスコラー
——

これまでのverceは意味を若干通しながらも曖昧な部分が多々ありました。しかし、3rd verceの一節「ほら i’m the one they call “loopy” また血を流すスコラー」で全部が紐解くことができます。最後の最後にキーを持ってくる辺りがまるで一つの小説を読んでいるようで気持ちいいですね。

「私は彼らにloopy(可笑しい/間抜け)と呼ばれている、また血を流した学者達」プトレマイオスは間抜けではないですし血を流していません、ではこの学者とは誰なのか?それは彼の著書アルマゲストに関係してきます。

アルマゲストは天文学を纏めた書物であり、プレソクラテス(ソクラテス以前の哲学者)のヘラクレイトスやタレスも同じく天文学に通じていました。アルマゲストで特に有名なテーマが「地球の天動説」になります。地球ではなく天が地球の周りを動いているという考えですね。それはギリシャ時代から16世紀まで長きに渡って信じられてきた考えでした。

そんな折、天動説に異議を唱えた学者コペルニクスを皮切りに少なからずの学者が地動説(天ではなく地球が動いている説)を推し始めました。しかしながらこれまで信じられてきた説を信じない彼ら学者達は世間からはみ出し者と扱われ間抜けと言われ、証明することもできないまま命を落とすものもいました。

3rd verceを通してわかったことは、この曲は地動説を唱えた学者達とDiggy自身を重ね合わせているということです。SOUL’d OUT時代からhip-hopの枠を超えて自分達の音楽を追求してきたDiggyと前提に囚われず自らの考えを信じた学者達との関係は似ているようにとれます。

特に「向こう側 天才 境界線 believe そうさ必要な強さ」がこの曲で1番好きなフレーズです。凡才と天才の境界線とは一体なんなのか、それは「先入観や他人の言動に囚われることなく自分の考えを信じることである」というメッセージが隠れています。

hook——
あしたなら神 アルマゲスター
みてみたいな マルの外側から
あしたなら神 アルマゲスター
してみたい 夢みたいんだ yellin’

PTOLEMY
———-

最後に再びhookを見ましょう、「あしたなら神」とは天動説をひっくり返し神になるという願望、そして「アルマゲスター」を踏襲するという願いとなります。Diggyは音楽としての概念の外側から、学者達は地球の外側から見てみたいということでしょう。まるで長く続く定説を作り上げたPTOLEMYのように。

2nd verceの「赤いapple」は地動説立役者のニュートンを表しているとすると、他にも色々と散りばめられてそうですね。ダブルミーニングの曲はとにかく歌詞を読み解くのが楽しいです。

YouTubeの飛躍、音楽のサブスクリプション化により人々はより直感的に聞き取れる曲を求めるようになりました。1度聞いて(歌詞を見ずに)意味がわかる曲がヒットする時代に、歌詞が分からない程の高速ラップはトレンドではないのでしょう。

しかし、そんな中自分の音楽を追求し、ジャンルを飛び越え唯一の楽曲を作り上げるDiggyは確かにはみ出し者ですね。歌詞を通して見ると今のDiggyの意思表現であり、私たちリスナーに向けた決意表明の曲に聞こえます。これがDiggyなりの「俺は」ってことでしょう。

洋平

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