ふぁんく/INTROSPECTIVEについて(2018/6/6)

こんにちは

Kanye Westが新しいアルバムを作って、
極東の田舎の国まで全員が騒いでいます。
Kanye West/ye

個人的には『Kanye West/YEEZUS』が一番大好きです。(トラックとか気持ち悪いから)

Yeezus
Kanye West
Defja
2013-06-17


世間一般的な最高傑作は『Kanye West/My Beautiful Dark Twitsted Fantasy』です。
MY BEAUTIFUL DARK TWISTED
KANYE WEST
DEFJA
2010-11-19



日本でも最高傑作の作り方を覚えてしまってから、
敢えて?スカした内容が多くなるラッパーは多いです。笑
例えば、『SEEDA/花と雨』。

花と雨
SEEDA
KSR
2006-12-23


こればかりは、日本代表する最高傑作です。
SEEDAはこれ以降、メジャーアルバムを除くアルバムは実験的な内容が多くなった気がします。

KREVA/心臓』もメジャーシーンですが、すごい傑作だと思うんですよね。

心臓(初回限定盤)
KREVA
ポニーキャニオン
2009-09-08


Kanye Westばりにかました気がします。
アンダーグラウンドのヘッズたちも黙りこくりました。
なお、定期的に出すアルバムはパッとしません(クオリティ凄いけど)。



一方ですよ。バトルMCの作品はパッとしないって世間では聞くんです。
変わりつつある話は既に認識済みだと思います。 
まだまだ、内容も面白くない曲が多いのも事実。

でも生粋のMCバトルプレイヤーの中でも、すごいリリックを書くラッパーがいます。
梅田のエリート、ふぁんくというラッパーのアルバムについてコメントしたく思います。
ふぁんく/INTROSPECTIVE
INTROSPECTIVE (イントロスペクティブ)
ふぁんく
DFBRecords
2017-04-12



ふぁんく」をネットで検索しても、的外れのコメントばかり。
梅田サイファーを第三者として適切に解説しているのは
あのgogonyantaさんくらい。さすが。(https://gogonyanta.jugem.jp/?eid=4854

誰しも初めは「マイク一本で勝ち上がる、成り上がるんだ」とラップします。
そうした成功のみが幸せとすら錯覚します。
でもマイク一本で勝ち上がるラッパーなんて1,000人いて1人いるかいないかです。
ほとんどのラッパーが会社員、自営業、アルバムとの二足の草鞋です。
ラップを仕事と呼ぶには難しい現状、多くのラッパーがラップ以外で幸せを見つけます。
なんとなし、ある程度の給与をもらい、結婚し、ある程度のコミュニティで生活できてしまいます。
それが幸せと感じ始めます。
過去を顧みて、ラップを「青春」として感じてしまった時
「ラップ」は二の次になってしまってると思うんです。

そんな「ありふれた経験」を惜しげもなく恥ずかしくもなく歌ったアルバムとなっています。
そんな「ありふれた経験」は、かっこ悪くダサいものですが、
誰しもがZEEBRAになれるわけもないのが実情です。

クールに自問自答のようにMCバトルで踏み倒していたラッパーは
等身大の言葉で踏み、身の丈あったラップをするようになりました。
そんなふぁんくのラップは共感できる曲が繊細な韻とグルーブで作られています。
大傑作です。


衝動
古いアルバムを捲ればあの日のまま 青臭い幾つものドラマ
決して戻らない 道は前にしかない 振り返っても意味が無い
と知りつつそれでも人は縋り付く 今の自分がちっぽけに思えて
一歩一歩歩いて来た筈 でも一向に進んでる気がしない
タイムカプセルの中 描いた未来 ここにあの頃の君はいない

理想 現実 過去 未来 狭間を彷徨う夢追い人
惰性に飲み込まれそうになる度にまたあのフレーズをリピート

結び直すシューレース こいつは一生を賭けた耐久レース
運命と夢がゴールで合流するまでは必死で食らいつくぜ


ラップの初期衝動について歌った歌です。
想像した自分とのギャップを感じた今の視点で歌ったラップです。


梅田
それ以外にやる事ねーの?ってズバリその通りご名答 街行くあいつは彼女とデート 俺らの青春 ビターチョコレート
まあどっちみち土曜日葬式でも無きゃ此処に来てまた夜通し
ストーキングする語尾 この瞬間こそ自分へのご褒美
それぞれのフロー リズムイズム 言葉尻でガッチリとシンプル韻踏む
あとはいつもの下らない馬鹿笑い たったそんだけ けどそれが全て
キックスネアハイハット ライム&フロー 梅田サイファー
スピーカーの喉が潰れたらお開きの合図 そんじゃまた来週

ふぁんく所属の名門梅田サイファーの歌です。
関西の韻が散りばめられています。
単純に単語のみで踏むわけなく、助詞にもかかっており、不自然のないグルーブを生み出しています。
そしてフローを使うことで韻を踏むこともしており、短い曲ですが技術力が非常に高いです。
梅田の方はこれができるので、日本語博士といっても過言ではありません。


オレオレ詐欺
ラッパー然とした姿を意識してる内に現実と音の上に深い溝が出来て
どんどん混沌としてく 一体本当の俺はどっち? 置き去りのリアルが一人ぼっち
例えばあいつは今日も羽振り良いが借金してパーリー 実際はバブリーフリ

誰かの真似 何者かになるに等身大よりも背伸びしたい
だけど俺は俺以外の何者でもない 同じものは一つとない それぞれのスタイル
自然と湧いたリズムイズムの中にオリジナルは息づく そんな事に一周回って気付く

知らぬ間に踏み込んでいる オンリーワンと言う名の迷宮
そこで見る光は目の錯覚 お宝なんて無かった 出口への道を記す地図はこの胸の中
だけどそれはゴールじゃなくてスタート 自分のペース 自分のテンポ 自分のリズムで
どこまでやれるか 一人孤独なマラソン そうビートが鳴ればアプローチは直感に任そう
やる事は至ってシンプル 自分を信ずる 言葉には偽りなくいつも隣り合うリアル
ファンタジーにピリオド こんなバースで現実に引き戻


「オレオレ詐欺」は、ラッパーとして名乗ることで保つ自我のような虚勢のことです。
韻の制約の中で、こんなしんみりするリリック書かないで欲しいです。

目の前のお前のスマイルが栄養ドリンク それが俺の成長とリンク
も秋も冬も休まずビート上でバウンスバウンス 蹴っ飛ばすバース

徐々に減る気の知れたフレンズ 「いつか戻るよ」 お決まりのフレーズ
大阪 横浜 高知 東京 例えあんたがどこに居ようと
懲りもせず梅田で待ちぼうけ またいつか朝までサイファーしようぜ

円はサイファーのこと。
定期に行われるサイファーはいつしか自然消滅します。
サイファーは主催者の負担がとても大きいし、参加者も必要。
そして人の環境は時間とともに変化するもの。
そんなサイファーに根付き、今も日本語ラップシーンの最前線に君臨する
ふぁんくは梅田に未だに残っているようです。
円はサイファーですが、「縁」でもあるんだと思うんです。

なにがすごいって、大阪のライブ帰りに
誰に連絡することもなく、
ふらっとR指定はサイファーするために梅田に立ち寄り
朝までラップをするようです。

目の前のお前のスマイルが栄養ドリンク それが俺の成長とリンク

きれいなラップです。

日本語ラップオタク

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