泉まくら/マイルーム・マイステージについて(2018/9/19)

こんにちは


昨今、ビッグアーティストこと安室奈美恵が引退した話で話題になってますが
そんな中、新潟の雄USUが引退しました。

はて、USU?となる方はいないと思いますが念のため、
USU a.k.a. SQUEZ
NITE FULL MAKERSのメンバーで、TOTOROW、SWAMPがいます。
全員、北陸もしくは新潟UMBのチャンピオンになったことがある生粋のラップ上手い人たちです。
(たしか宇宙忍者バファリンも新潟)
B-BOY PARKの生き残りと評価したら、怒られるのでしょうか。(褒めてる)

楽曲もフリースタイルも時代がもう彼らを求めていないのは事実で
時代が求めているラップをできないのも恐らく事実。
だけど安室奈美恵よりも余裕で感情移入しちゃいます。

固く韻を踏むことだけに注視した「ザ日本語ラップ」は形を変え、
リリックの内容、トラック、フロー、トラップの乗りと変えられていきます。
世では評価が低い人もいる思いますが、日本語ラップ時代劇があれば100%ちょい役で出演するであろう日本語ラップ一人者なので、
今までローカルを支えて頂きありがとう御座いますと感謝を伝えたいです。




一方、時代が求めているものをばっちりやっているラッパーのアルバムをコメントしようと思います。
(んまぁ、来年にはこのラップも古くなってるかもしれないので、
何があるか分からないってことですよね。)

泉まくら/マイルーム・マイステージ
マイルーム・マイステージ
泉まくら
インディーズレーベル
2013-10-11


前回は思い切って、「泉まくら/愛ならば知っている」サードアルバムを紹介しましたが

愛ならば知っている
泉まくら
術ノ穴
2015-04-22

今回はセカンドアルバムを紹介したく。(ファーストじゃない)
このアルバムから私はがっつり聞き始めたので、仕方ありません。

一応、キャッチコピーは
「さみしくて 流されやすくて そしてちょっぴりエッチで。ラップをしちゃう普通の女の子」らしいです。


このアルバムは歌詞をしっかり聞いて、同様、
泉まくらに自身を投影できる作品です。
多感な女子高生、流される女子大生、けだるいOLになりきれる画期的なアルバムなんです。(気持ち悪い男目線)
表現が脱線しましたが、要は自分の情けない殺したい感情を泉まくらが正確に語ってくれるアルバムなんです。
自己肯定が非常に弱い、神門に似た精神性のリリックです。


アマゾンのレビューにあって妙に納得しましたが、
「自分の代わりにリストカットしてくれるアルバム」
なんです。




このアルバムを聴く限り、泉まくらは恐らく女子大生終わりたてのOLなんだと思います。
毎日の女性の出来事を素直に受け取り、素直にアウトプットしているリリックが目立ちます。
顔は一切公表しておりません。大島智子さんの絵ばかり使用しているのが印象的です。
私は泉まくらがきっかけで大島智子さんの画集とサイン会に足を運んでしまいました。
スーツ姿のおっさんは私だけでした。(地獄)
というのも、アルバムを聞きこむたびに泉まくらというラッパーに興味が止まらないのです。

普通のラッパーであれば、ライブを見に行ったり、
あるラッパーに至ってはラジオやブログ、ツイッターまでしており
人となりをつかむことが出来ますが、泉まくらはそれすら許しません。

内面のリリックの話をしましたが、本作のラップ(フロー)は妙にうまいです。
もしかしたら、この泉まくらがラップをやる契機となった理想のラッパーは
ゴリゴリにラップが上手いラッパーなのかもしれません。
言葉をしっかり発音する(口語体に近い)タイプでトラックにしっかり合わせるタイプでしょうか。
もしかしたら、Mummy-dあたりが好きだったりするのかもしれません。





ところで本作は、不穏なスタートです。

「マイルーム・マイステージ」

精一杯の力でベランダに出る。
洗濯物の揺れるにおいを眺めている。
そうしていると、私の番が来て
私は着替えを始める
着てしまえば案外似合っている気もしてくる
誰の背中も相槌もない
なんてすばらしいこのステージ
マイルーム、マイステージ

30秒の無音の中、語ります。
抽象的すぎますが、このアルバムのコンセプトは「彼氏に振られた失恋」が中心で
そのイベントから生じる様々な感情を曲ごとにラップしています。

ベランダ、自分の部屋から出る=社会、外の世界に触れる
こと自体が腰が重く
受動的に物事を受入れて生活し、自分の意思なく
なんとなく納得していることがわかります。
誰からも教えてもらえない、孤独な様から本作はスタートです。




「棄てるなどして」

棄てるなどして
棄てるなどして(もっと)
棄てるなどしてるのに
増える増える増える

気に入ってた服もあっさりお下がり
なんかもう要らない物ばかり溜まりすぎ
この部屋も引っ越そう
家賃、面積「上限なし」で検索
駅徒歩5分 ペット可
欲とかも全部さ
棄てたはず 棄ててるはず
コンマリもびっくりの潔さなはず
あの子もこの子も要らん世話
正反対の身の上が ガールズトーク邪魔する
スルースキルあるはずもなく
「だよね、だよね!私もそう!」キツい
妬みやっかみにおちょくられ
みなぎるパワー 回る回る地球も
最後誰か棄ててバイバイ
それでもきっと goes on…

もう、振られて、自暴自棄タイムです。
モノだけを捨てるにとどまらず、元彼といた部屋も嫌になり引っ越し
なんなら感情すら捨てたい状況です。
(hookの「捨てるなどして」が「捨てるなら、して(もっと)」と聞こえるのは勘違いなんでしょうけど)
なお、トラックはEVISBEATSです。



「ワンルーム」

失恋休暇とやらが取れるらしいので
さっそく二連休中です
触ったこともないプレステだけど
置いてったんならもらおう
ワンルームってやっぱ一人のもんだわ
溜め息よく響く白い壁には
AKB かなんかのポスターの跡など
あーそうか失恋か
ケンカ別れとかネタにされんだから
てかあれだけは返して欲しい
「要らんやろ」って言うけど
そんなの決めるのは私
西陽差す 苛立つ 汗ばむ
遅いなぁ 時間指定もしたはず
写真の束捨てたら
薬局くらい行くつもりだったのに
宅急便
あんたがタイミング悪いから
今日も一歩も外に出ず終い
19過ぎて二十歳も過ぎて
まぁこんなこともあるとか知って
今じゃ愚痴る給湯室
正直あれってそんなに
怒ることじゃなかったかもとか 今更さ
汗だく駅までダッシュ
家で待つ話し相手はバグった扇風機

ここでのワンルームは元彼と過ごした部屋のことです。
彼氏が持ってきたゲーム機、彼氏に貸したもの、彼氏との写真など思いを馳せてると
この部屋から出れない(彼氏のことを忘れられない)未練たらたらソングです。
「あんなことで怒るんじゃ無かった。。。」
神門と同様のことを後悔していますが、余裕で男女問わずあるあるなんですね。


ここで言うのはあれですけど、たぶんですよ。
泉まくらの出身在住が福岡(熊本自身のとき福岡在住)。
でもここに出てくる彼氏は関西弁なんですよね。
よって、大学は関西圏の大学、就職を期に実家に戻り、彼氏とは遠距離。。。。
(東京近郊路線図っていう曲もありますが、あれは何だかよそよそしい、
上辺感がある気がするんですよね。。。。)
しかも泉まくらのデビューは兵庫のSNEEZEのミックステープです。
ということは、、関西学院大学じゃ。。。

というくっっそどうでもいい推理しています。



「君のこと」

勘違いしていた 君のこと あの噂
すずめが電線から落ちる朝
皆が上の空するあくび すり抜け始まる日
寝癖しかめる顔 まぶたに確かめるほど
こんなにはっきり思い出せること 他にはないと知るよ

好きだったんだと思う
好きだったんだと思う

いくつかの角 曲がるたびちゃんと
君を振り返ればよかった

さよなら さよなら

勘違いしていた 君のこと あの噂
すずめが電線から落ちる朝
皆が上の空するあくび すり抜け始まる日
窓の外眺めて 憂鬱を気取って
僕の日々をめくって
カレンダーは薄くなって 印のついた日はもう無くなって

好きだったんだよ
好きだったんだよ

嘘をつくどころか 話すら出来なかった
情けない僕だ

この歌は妙に明るいです。
アルバム全体はコンセプトの割には、すごくアルバムが重たくなくて
(そもそもトラック自体明るかったり、声もゆるふわ、表現も豊か)
通してめっちゃ聞きやすいアルバムです。
だからタイトルも一見してわかりにくいようにしてます。

この歌は元彼との決別の曲です。
一番は「好きだったんだと思う」と控えめですが
二番はふっきれ「好きだったんだよ」と自信もって伝えられています。
これにてお別れ。終了です。



楽曲作成も旺盛なので、今後もウォッチ必要です。
話は冒頭に戻りますが、
今の時代が求めている「自己肯定がとても低いの若い人」向けのサプリメント的アルバムです。


日本語ラップオタク

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