椎名林檎/無罪モラトリアムについて(2018/8/6)
こんにちは
最近、MCバトルブームで尖りに尖った若手とよく会います。
美しいですね。
人は生きていけば、年を取れば、「尖り」を失ってしまい
身の程を知ってしまいます。
ということは「尖り」は刹那なもので、人生のうちの一瞬の輝きなんですよね。
社会人として生きていると万人受けする「優しく無難な人」が好まれますが
そんな人に人としての魅力は感じることはできません。
ラッパーは須らく鋭く尖っています。
ラッパーが「実は俺も普通の人なんすっよー」的なことをインタビューでぶっちゃけ話をしているのを見ると
プロレスラーが覆面を外して、バラエティー番組に出たり
ギャルが卒業してメイクをナチュラルにして、大人しい服を着るくらい切ないです。
ラッパーのカッコよさは皆若い時に憧憬した「傾奇」なんだと思います。
そんな尖りを最も端的に表したアルバムをコメントしたく思います。
『椎名林檎/無罪モラトリアム』
ラッパー違うんかい!!!
っていう流れですが、本作は「ラッパーのかっこよさとは」の前述通りの答えを明確に表しています。
これは椎名林檎のデビューアルバムです。
しかもミリオンセラーです。
「無罪モラトリアム」の意味は、
一人の人間としてまだ社会に出なくても許されてる立場の人間の期間をモラトリアムと示しています。
一人の人間としてまだ社会に出なくても許されてる立場の人間の期間をモラトリアムと示しています。
その立場の人間の行為は許されるべきことで、
無罪モラトリアムというタイトルで本作自体のコンセプトも
無罪モラトリアムというタイトルで本作自体のコンセプトも
椎名林檎の若い時の生い立ち、葛藤、考え方を如実に表しています。
要は「誰しも、若気の至り・黒歴史あるよねー」ってことです。
かっこよく言い回して、「無罪モラトリアム」なんて思いつきますね。
かくいうCreepy Nutsも同じコンセプトでラップしています。
R指定の初めてのUMB2012本戦の登場曲「椎名林檎/本能」です。
そして初めてのシャウトは「ちん〇」の一言だけです。
いやー若い!尖ってます。笑
この時のR指定は「キャラクター、プロップス」で上がっているラッパーを毛嫌いし、
スキル至上主義として関西韻踏みスタイルを昇華して成り上がっていました。
その年、優勝した晋平太を3回の延長までもつれ込ませ、結果スタミナが切れて負けてしまいます。
本人も後ほど語っていましたが「仕留めた!!」というラインはいくつもありました。
晋平太の全盛期を無名のラッパーがスキルだけでねじ伏せた瞬間でした。
話は脱線してしまいましたが
椎名林檎の10代の生き様がこのアルバムから垣間見れます。
同世代の宇多田ヒカルとaikoと圧倒的に違うのはリリックだと思われます。
というかロックも聞かないし、音楽は詳しくないし、楽器も知らないので
そこの違いしか理解できません。
独特な言い回し・リリックがストロングポイントなラッパーも多いと思います。
神戸薔薇尻、鬼、スラングが多いNORIKIYOなんかもリリックは面白いですね。
「正しい街」
あの日飛び出した此の街と君が正しかったのにね
不愉快な笑みを向け長い沈黙の後態度を更に悪くしたら
冷たいアスファルトに額を擦らせて期待はずれのあたしを攻めた
君が周りを無くした
あたしはそれを無視した
さよならを告げたあの日の唇が一年後
どういう気持ちでいまあたしにキスをしてくれたのかな
短い嘘を繋げ赤いものに替えて疎外されゆく本音を伏せた
足らない言葉よりも近い距離を好み理解出来ていた様に思うが
君に涙を教えた
あたしはそれを無視した
可愛いひとなら捨てる程居るなんて云うくせに
どうして未だに君の横には誰一人居ないのかな
あんな傲慢な類の愛を押し付けたり
都会では冬の匂いも正しくない
百道浜も君も室見川もない
もう我が儘など云えないことは分かっているから
明日の空港に最後でも来てなんてとても云えない
忠告は全ていま罰として現実になった
この歌詞を暗い内容だと解釈する人もおられると思いますが
これは挑戦の決意の歌とも取れる気がするので、私は力強さを感じます。
「さよならを告げたあの日の唇が一年後
どういう気持ちでいまあたしにキスをしてくれたのかな」
「可愛いひとなら捨てる程居るなんて云うくせに
どうして未だに君の横には誰一人居ないのかな」
多くは語らないですけど、この一文は自分のことめっちゃくちゃいい女だと評価していますね。
いい女ですね。。
いい女ですね。。
Ringo Expoのアンコールでこの歌を歌うんですが
これまた綺麗!!!
なぜか片足でギター弾きながら歌うんですが
これまた綺麗!!!
無駄なものを一切そぎ落とされた髪型、服装、体型
これまた綺麗!!!
お買い求めの上、是非見てください。
「幸福論」
本当のしあわせをさがしたときに
愛し愛されたいと考えるようになりました
そしてあたしは君の強さも隠しがちな弱さも汲んで
時の流れと空の色に
何も望みはしない様に
素顔で泣いて笑う君にエナジイを燃やすだけなのです
本当のしあわせは目に映らずに
案外傍にあって気付かずにいたのですが
かじかむ指の求めるものが 見慣れたその手だったと知って
あたしは君のメロディーやその哲学や言葉
全てを守る為なら少し位する苦労もいとわないのです
時の流れと空の色に
何も望みはしない様に
素顔で泣いて笑う君のそのままを愛している故に
あたしは君のメロディーやその哲学や言葉
全てを守り通します
君が其処に生きているという真実だけで 幸福なのです
キャラクター、外見、歌い方に反して
内容はものすごくピュアでシンプル。純粋無垢の内容です。
当時の彼氏との恋心を歌った歌のようです。
(この動画の歌い方もすごいセクシーでいい歌ですよね。。。)
「その人の笑顔、何気ない会話」とか陳腐な表現で愛を伝えません。
「君のメロディーやその哲学や言葉」
メロディーってなに?って感じですけど、会話とか感が方に惹かれたことを
こんな風に表現されるとキュンキュン来ますね。
その彼氏との痴話げんかのことを「積み木崩し」として表現したり、かわいいところがあり
「ここでキスして」なんか一聴くそ重い曲ですが、そんなことは言葉に出せない
誰しもが持つ熱い思いのみを胸に抱いたままのお淑やかな女性であることが
アルバムを通して理解できます。
わずか10代の女性が当時付き合ってた男性と自分の夢を天秤にかけ
地元を飛び出す力強いアルバムです。
結末はアルバムのタイトルを見ただけで理解できます。
「同じ夜」「警告」「モルヒネ」
もう警告したうえに出ちゃいけないものまで出てますし。
あまりロックは詳しくないですし、良さもこれっぽちも理解できていませんが
私の感想をいつも通り主観的に書いちゃいました。
このアルバムは若い時のエナジーを剥き出しにした
尖り・純粋さ・等身大な作品です。
変にかっこつけないリリックが最高です。
余談ですが
私は日ごろ日本語ラップを80%聴いて生活していますが
残り10%USヒップホップ、4%が椎名林檎、3%が星野源、3%がBiSHです。
偏った音楽性の為、あまり音楽談義には花が咲きません。
日本語ラップオタク