「ZORN/新小岩」について(2020/11/20)
こんにちは

先日、Creepy Nutsの日本武道館ライブを見に行ってきました。めっちゃよかったです。
一方で、Creepy Nutsが情熱大陸に出演することで、ラッパー・日本語ラップヘッズの一部では”もやもや”してしまって、Twitterでグチグチ言ってた人も多かったように思います。
ぼくは世代だし、RHYMESTERが常に言ってた「持たざる者」が勝つ瞬間をどうしても見たかったんです。
ぼくは、地元が京都だったんで、18歳のときから、隣町の大阪でぶいぶい言わしてる若いラッパーがいると聞いていました。それは、KOPERUとR-指定でした。
Creepy Nutsが一般人に分かりやすく、一般人の身近に感じやすい方法で、スターになっていく姿は、ぼくは受け入れやすかったです。
武道館のライブは、RHYMESTER・ZEEBRAとは打って変わって、シンプルな舞台でした。
初日に行ったんですが、DJ松永は常に涙目で、彼に似つかわしくなく言葉数が少なかったです。曲ごとのMCタイムでは、感慨に耽っていたように思います。
なんなら、このまま紅白歌合戦に出て、各方面からグチグチ言われてほしかったですね。
そんな日本武道館を控えてる、日本語ラップヘッズ手放し賛同できるラッパーが、ZORNです。
「ZORN/新小岩」
昭和レコード卒業後、自主レーベルでの登場です。(サブスクなし)
ぼくは、日本武道館のチケットは外れたんで、どうしたものかと思っています。笑
前回まで、ダラダラと自己がパパであることを、エモいトラックで語っていましたが、今回は、シンプルに「新小岩のラッパー」であることを力強くラップしています。
昨今まで、ZORNに似つかわしくないトピックで、”Love”とか”日常”をラップしていました。今回は信頼のBACH LOGICが全曲プロデュース(One Micのときは、悪口言ってごめんなさい)です。
ZORNが今までアプローチしたことなかったような新鮮なフローと韻で
スピットする内容は今までと似たようなものかもしれませんが
かなりフレッシュに私の耳に届きました。
韻とフローの役割を正しく認識できた良作です
「Shinkoiwa」
地元葛飾区 白のシャツにVans
衣装も買う気なく自己をまず磨く
日本のラップを聴かす 既存の枠にファック
キロのシャブにバッズじゃなく辞書のある自宅
ビート上ライムみたく絞る苦い思い出
一人三度の檻で後悔も痛いほどして
こんな未来像をイメージ すべてシナリオ通りで
視界良好 以前石ころ から期待の星へ
謂いたいこと言って握る主導権
かける王手 ならない有頂天
ホーミーの仕事ならグレーで不透明
中に入る半グレじゃなくて全グレ
だけど俺はケンドリックよりも優等生
ユノンセン?
change my life
鋭利なナイフより手にはマイク
敬意払い ステージ上がり 学歴じゃない
俺はラッパーでよかった これは馬鹿でも簡単
苦労かけた嫁に渡す高嶺の花
うるせー黙れおかま しとけCO2の削減
気取るのだっせー オレは韻とフロウだけ
紡ぐ記憶の断片 奴は執行猶予何年
達也に伝えとけよ 焚くな日本武道館で
偏差値も電車賃もなかったガキ
少年院か懲役か 馬鹿ばかり
正面突破 どけこら 待ったはなし
だって新小岩の信号には赤がない
駅のホームのBGMから物語は始まります。
正真正銘hoodスターとなったラッパーが匂わせ続けた日本武道館にたどり着きました。
ここにきて、ZORNがKendrick lumerを比喩するのは、無理があるやろと思いましたが(ケンドリックって真面目な勤勉な学生だったんでしょ?)
新小岩の信号はずっと、青と黄色しかないという耳より情報を得ました。
「Rep feat. MACCHO」
バカ丸出しのやんちゃな13,4,5
歌広でオジロ ラッパーがスーパーヒーロー
変わらずな進路 約何年経ったろう
パクられ刑務所で泣くなんてやだろ
In My Hood やっぱティンバーランドブーツ
都会じゃ生まれない いなたいクール
俺を杉山って呼ぶみんながいる
駄菓子屋のおばちゃんも見に来たライブ
黄色い総武線 ビートにボールペン
一生一直線なB-Boyの夢
新小岩駅からシンフォニーのステージ
娘をリムジンのシートに乗っける
最初から持ってた 金じゃ買えないもの
今は三世代で海外旅行
最愛の嫁にもサプライズ
Thug LifeじゃなくHug Life
立ち止まってもまた歩き始める
後ろなんて見ずあの時から自負
オジロヘッズ息づく根強く一途
街の景色みてぇなもん土地の一部
足元暮らすトコ ルーツ スタイル スタンス無きゃただの音全部が点とか線なら
ビートに韻とかフローだけ乗せても
退屈 ドラマが見えてこねぇんだよ
色んな色のベイスターズキャップ
AssassynJeanzヤンキーが着てた
仲間意識 高まる士気が
昔からイケてたヨコハマのオリジナル
ばあちゃんが言ってた
じいちゃんとの出会いは
PX フェンスの向こうのアメリカ
瓶のコーラ中ピーナッツ入れ飲み込む泡
水面濁る地元にゃ大岡川
俺の原点はサイファー あとイケイケな毎夜
地位とか名声やダイヤよりも経験が財産
バースに訂正はないな いつもテメーがライバル
まだ鮮明な会話 いつかぜってーが今
若手 ベテラン みんなもろジェラシー
葛飾区に来な おもてなしする
俺は滝川クリステル
でもとしやがマリファナ売り付ける
浜の怪獣はILL 存在に在り方がある
てめぇの身の丈分 媚びず気高くいる
大量にいいのよこせ 俺のツレの分も
別に鼻ちゃん無くてもいいWEEDにL
ラップごときで人の心動かせる
勝手に言ってなってたレペゼン
ホザいてた程大層なモンじゃねぇが
でも愛してんだ街 返したいものはLOVE
THA BLUE HERBとの対バンのときに、MACCHOも見ましたが
会場が潰れるのかなって思うくらいのラップの破壊力でした。
言葉の力とかいうよりも、シンプルに声だけで分かるかっこよさです。
そして、ZORNが負けず劣らずの、文脈で纏め、力強くラップします。
「Memory Lane」
青空 浜辺ってロケーションじゃない
俺らがいたのは土手のあたり
はんざにぶつけたロケット花火
レモンティーと間違えてションベン飲んだあいつ
川に投げ捨てたバーベキューセット
カラオケでのキス 酒くっせ
いつもみんなでカップラーメン食って
ナンパしたな マック前周辺
くそ暑い夏 ふと弾み出す胸
でも井の中 ずっと葛飾区
室町でタバコパクりまくる
もめ事が起きる祭やプール
昔からの仲間が一番
家族より共にした長い時間
今も俺を支える固い地盤
経験は価値が下がらない資産
歩きながらマルボロふかす
めぐる記憶 夏のフォトグラフ
ヤンキーたちはチャンプロードの通販
B-Boyたちはカスローのポスター
鮮明なあの子の浴衣姿
俺から心を奪った夕方
それから数年後に深まる仲
でも全部台無し 捕まる馬鹿
夜のたまり場、曲を流した
近所が通報して呼ぶお巡りさん
路上に転がってた多くの学びが
イケてるつもりのSOHKのサンバイザー
ほんの些細なった数秒が
この感傷の理由分かるっしょ
拗らせて中二病なら重症
俺らこの街がまだ住所
悪事をさらっとラップしています。つくづく思いますが、くそチンピラですね。
川に捨てないでバーベキューセット。。。
夜の騒音で騒いどいて、路上に学びがあるなんて、、、、ひどい!(笑)
ZORNのリリックに「性の多様性を否定」するようなリリックがあるとか
Twitterで見かけますが、そもそも鬼もZORNもまともな人間じゃないので
そんな批判はちょっと難しいかもしれません。(時代に相応しくないでしょうし、是認するものではなく)
じゃぁ環境問題の意識が高い人は、川の汚染を気にしますし(グレタさんブチギレ案件)、子持ちの親は、ZORNみたいなやつらが夜中騒いでたら110番です。
ラッパーに、何を求めるのか、人それぞれで、否定はしませんが
求める相手があまりにも社会不適合者過ぎませんかと思います。
「Rollin’ feat AKLO NORIKIYO」
馬鹿みたいな高級ホテル 女優 モデルも即呼べる
ゴールドチェーン 乗るベンツ 持つロレックス 豪遊とセックス
欲望全部かなえたら幸せって考えだった
資本金ない若手ラッパー 貧乏人のHip Hopドリーム
おれはそれを手にした 派手な世界も目にした
眺めていた景色は近くで見りゃメッキだった
上辺だけで空っぽ 比べるのはカラット
金持ちでも分かり合える人がいなきゃかわいそう
SNS開きゃ、ブレス ネックレスだとか
フレッシュな服や靴 人がフレックス
こっちは仕事必死なのにさ リゾートビーチなうとか
なんかたまに自分の人生が見劣りしちまうよな
でも忘れない俺が持ってるものは何だ
愛や尊敬に感謝 とっくに上出来だった
俺はドンペリなんか空けなくても両手に花
今、「年収1,000万超えた~」とかラップしてるR-指定が聴いたら、失禁しちゃうバースです。というか羨ましい。
かっこよくて、(ちょい)ワルくて、ラップが上手いって、モテる要素を備えすぎてます。
高級ホテルで、女優とモデルとセックスする世界を経験して、今は「家族」がいる幸せが~~ってバカにしてんのか!と。
Creepy Nutsとは違って、まじで、何も共感できない異世界すぎる曲です。
これでラップが上手いから聴けますが、まじで、何も共感できん!
これがカースト制度の格差です。生活の質が違いすぎて泣けます。
「Life Story feat. ILL-BOSSTINO」
俺は今日も作業着 タバコと缶コーヒー 日々はパターン通りただの一般庶民
何よりまずは衣食住の三拍子 真っ当に生きるのがカッコいいと信じる
不自由さの中に本当の自由 俺を俺たらしめるのは労働と知る
くよくよ嘆くよりも苦労も買ってく 覗く待ち受け それで強くもなれる
ド派手な成功 温和で平凡 何が幸せ 答えはねーよ
自分で決めろ 心の根っこ 俺が見んのは夢と子供の面倒
あの頃 光熱費すらも滞っては 2〜3万のギャラを嫁と喜んでた
貧乏で質素で豊かな暮らし 億万長者も孤独だったら虚しい
苦しみにも美がある 信念に従う奴にビガップ
全ての働く人間の人生に 僭越ながら俺がいいねを押してぇ
それは素通りされるストーリー 生活の声よ 柵を越えろ
嘘のない言葉 お前を後押し 武道館の翌朝も俺は作業着
どんな仕事も最後クビ 縁がないネクタイ ボーナス 退職金
デモテープをレコード会社に送り あちこち出世払いの約束先送り
言うだけなら言える 今に見とけ 口だけ野郎とラッパーは紙一重
北向きワンルームからの空はいつも灰色で 太巻きジョイントが痛み止め
そっから四半世紀のアドベンチャー 語る体験談 ある意味ヒップホップ最先端
老いぼれ挑戦者 フルメンタル ライムディスペンサー 心技体で三連単
達成感ってのはシャボン玉みたいなもんだな もっぱら絶やさねえ音沙汰
ZORNからのオーダー 本番はこっから 武器はガッツと信用 トニーモンタナ
生きるために生まれ 死ぬために生きる 鍵は常に時間が握る 命の皮肉
出し惜しみしないで使い切る 自らディール取り仕切る 売りはリリック
こんな事 所謂2度と起こらないミラクルな気がする 全部そうだって気が付く
街が暮れなずむ 常ならぬ様見破る 言いたい事ありまくる 今だ 書き殴る
いいかい シナリオを書き上げたらすぐにキックするべきだ 見様見真似でいいからやってみな
それだけでした これだけで来た 何より俺だけってワケじゃなかったからここまで出来た
ガラガラのショーケース 朝方の光景 ドン底の毎日 根拠のない確信
BOSSと行ったもんじゃ それも夢だろ 仲間はキャバクラで自慢 俺の連れだと
新小岩いいとこ また行きてえ 話してえ事 全部生きてこそ
あんたも我が子の成長を必死にメモ取る いつかのためのとっておきの引出物
例えばあの人のボロボロの服 どんなオートクチュールよりも超特注
人生模様 みんな一点物 俺は俺 お前はお前でいいってこと
最初だけ勢い良いとかじゃねんだよ すぐに忘れんだと 忘れんなよ
そう生きるのも勉強 一流ほど謙虚 奮えて眠り 握るこのペンを
ひょっとして何か成し遂げたつもりでいるんじゃって そんな訳ねえじゃん
これだけは覚えとけ まずは夫婦円満 俺の意見より嫁の機嫌
10年前のBOSSは、残酷なまでに否定に否定をつづけ、Hip Hopの枠を狭めた張本人です。それがこうです。
「シナリオを書き上げたらすぐにキックするべきだ 見様見真似でいいからやってみな」
人は、こうも丸くなりますか!!!!と笑
あちこちオードリーでニューヨークが言う「ダウンタウン理論」です。
ダウンタウンが第七世代に優しすぎる話です。笑
まぁ、これはこれでリアルですし、正直、一番BOSSのバースにくらいましたし
涙しました。
総括として、本アルバムは、日本語ラップ好きならまず嫌いな人がいない作品です。王道も王道です。
この日本語ラップを知らない人に勧めてもいいでしょう。
ZORNがCreepy Nutsみたいにテレビでラップをして、間口を広げる世界は、この世にありませんし
アンダーグラウンドのラッパーが成り上がる点でも、BAD HOPが日本武道館でラップしたので、その点でもあまりも評価はされない気がします。
だからZORNの今回のアルバムって、日本語ラップ史において、何が重要なんだろうかと思うと、ちょっと影が薄いと思うんですよね。
でも、本作は飛びきり内容が良かったので、今回からのZORNの展開次第では、
ANACRHY以上にシーンの中心に存在してもおかしくないと思うんです。
ましてや、同性代のCreepy Nutsと共演っていうのもなくはないと思うんです。
相反するZORNとR-指定がラップする世界は、そう遠くないと思うので
オーバーとかアンダーグラウンド関係なしに、良曲が生まれることを祈ります。
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