GAME

高野


近年日本のヒップホップシーンで問題になっているのはプロデューサーを巡る話だろう。これを書いている時のホットな話題としてはDJ PAT504氏によるMURO氏へのツイートだった。終結したビーフを掘り起こすのはスマートではないので詳しいことは各々調べていただきたい。そんな二人のビーフの発端となったDJ PAT504氏のツイートの中でこういったものがあった。以下原文通りで載せさせて頂く。


「以前、お前は俺に、パソコン、サンプラーを使えないと言っていたって事は、DAWソフトは何一つ使えない。お前が使える音楽機材は、ディスコミキサーとターンテーブルしか使えないのに、何でEDITできんだ!優秀なマニピュレーターにやらせといてこのホラ吹き野郎ー!」 


個人的にはこのツイートはなかなか衝撃的なものだった。しかしMURO氏が機材を使えないというのは割とオープンな事実だったらしく、DJ WATARI氏やSUI氏、D.O.I.氏などがビート制作に関わっていたそうだ。


では自分でビートが作れないMURO氏はプロデューサーと名乗っていいのか?というのが問題になる。


去年同様のケースで大きく批判されたプロデューサーコンビがいる。それがDJ CHARI & DJ TATSUKIだ。


事の発端は彼らの楽曲『Feel (feat. IO & 唾奇)』のMVに「このビートは”リース”のビートで彼らはトラックメイクをしていないのにProduced by DJ CHARI & DJ TATSUKIと名乗っている」というようなコメントがあったのがキッカケらしい。


実際この『Feel (feat. IO & 唾奇)』に関してはd-smoothの『Fuck Wit U』と同様のビートを使っている。


この一件を通して前述したMURO氏同様DJ CHARI & DJ TATSUKIのプロデューサーという肩書きは間違っているのではないか?という疑問が出てくる。


だが答えは簡単だ。


彼らは”プロデューサー”である。


ヒップホップのプロデューサーの仕事にはもちろんトラックメイクも含まれるだろう。実際多くのヒップホップアーティストの作品でビート担当の部分をProduced by~と表記している。だがそれだけがプロデューサーの仕事ではない。特にDJ名義でのアルバムだとそうだが”あのアーティストとこのアーティストを組み合わせよう”だとか”今回はこのトラックを使う”など制作のイニシアチブを握りゴールを作っていくのもプロデューサーの仕事である。


そしてDJ CHARI (略 CHARI)とDJ TATSUKI (略 TATSUKI)もそう言った形でプロデュース業を行なっている。


前置きが長くなってしまったがそんなCHARI氏が先日ソロ名義で初のEPGAME』をリリースした。


オープニングトラックはKANDYTOWNからIOKEIJUを招いた『Come With Me』だ。オートチューンのかかったKEIJUの声が非常に心地よい気分にさせてくれるフックとKANDYTOWNやソロとは違うトラップ風フロウを聞かせてくれるIOも新鮮だろう。


二曲目は神戸のYoung Cocoとの楽曲『Enemy』。いわゆる勘繰りソング的な楽曲でもありながら、変わらない自分と変わっていく状況をヤングな目線で歌っていて面白い。他の収録曲とは違うダークで重たい空気感を一人で担っているのも素晴らしい。


三曲目は2019年を代表するラッパーTohjiが在籍するMall Boyzとの『aero』だ。この楽曲の魅力は何と言ってもTohjiのズバ抜けた言語感覚だろう。


Hey yo 俺は空を飛ぶ、お前なびかせる髪、太陽の光 Hey yo 俺は空を飛ぶ雲の上で吸うcocaine、俺らレミオロメン」


彼ららしい壮大なトラックに合わせてこんなフックを歌い上げるTohjiは唯一無二なオリジナリティを感じる。


EP
の前半を締める曲は姫路のクルーMaisonDeからPunekiLLaクルーからBLAISE、変態紳士クラブのレゲエDeejayVIGORMANという三人の若手クルー・グループのコラボ楽曲。まさにCHARI氏といった組み合わせだ。タイトルもそのものズバリ『Forever Young というのも粋だろう。


そしてEP後半戦はKANDYTOWNからMUDGotzzをフューチャリングした『Do It Like That』から始まる。ウェッサイなビートはMUDの主戦場といった感じで軽々と乗りこなしている。Gotzzも頭に残るメロディでフックを歌い上げてるのが印象的。そして何と言っても唯一CHARI氏本人のシャウトがあるのもこの曲である。MVも景気のいい感じでフロア受けしそうな楽曲だ。


次に続くのは飛ぶ鳥を落とす勢いのお台場がフッドのクルーNormcore Boyzを呼び込んだ楽曲『Million』。無機質なビートにYoung Daluの甘いフックがなんともいいバランスを保っている楽曲。やはりNormcore Boyzのキャラ立ちは素晴らしいと思わせてくれる。


そして本EPの最初のリード曲でもあった『CONTROL』に流れていく。客演はYoung Dalu,、OZworld a.k.a. R'kumaShurkn Papという若手最前線の三人だ。楽曲の空気感はCHARI氏の代表曲でもある『ビッチと会う (feat. Weny Dacillo, Pablo Blasta & JP THE WAVY)』の精神的続編といった感じだろうか。MVもカラオケの映像をパロった物でなかなか面白い。やはりクルーも出自もスタイルも違う組み合わせが見れるのは氏の楽曲ならではといった感じだろう。


本EPはTaeyoung BoyとDrivxsフューチャリングした『Did it.(morning)』で幕を閉じる。Taeyoung BoyとDrivxsの相性の良さは前から証明済だが、短い楽曲ながら清涼感と色気を感じさせるTaeyoung Boyのラップは流石だ。


そんな2019年の日本のヒップホップシーンの熱量を感じさせるEPだったが氏の代表曲である『ビッチと会う (feat. Weny Dacillo, Pablo Blasta & JP THE WAVY)』級のヒット曲が無かったのも事実である。やはり今作は組み合わせの面白さというよりは一つのEPにこのメンバーが揃うなんてという要素が強くてあくまでもコンピ的比重の方が大きく感じ取れた。


ただCHARI氏の本業はDJということもありDJプレイでかけやすい楽曲が揃っているのはやはり流石だろう。


今の若手ヒップホップシーンは彼らと楽曲制作するのが一つのステータスであるように思えるし、BAD HOPなどのバックDJをほぼ専属で手掛けたりと若手を中心にシーン全体のプロップスもかなりあるように感じるのでソロでのフルアルバムも非常に楽しみだ。


最後にリースのビートのプロデューサー名をネットに出さない理由を本人が答えている動画があるのでここに載せさせてもらう。



高野