神門/エールについて(2018/12/12)

こんにちは
支持を受ける人気ラッパーが今日たくさんいます。
その支持層は多種様々、若い子は圧倒的にBAD HOPでしょう。
最近ではAKLOZORNがYOU TUBEやストリーミング再生を武器に
キャッチーな音楽を若い子向けに量産しています。
HIPHOPだけにとらわれず、ジャンルを選ばない幅広い層にはCreepy Nuts
EXILE系のおにいさんには、ANARCHYSALUがいます。
オシャレで分かってる人たちはPUNPEEがいますし
とにかくチルとか言ってる輩にはBASIがいます。

一方でフリースタイルだけでいうと
2000年生まれのラッパーが大人気で
フローに卓越したラッパーや、たくさん韻を踏める子など
キャラクターに富んでいます。

そん中、圧倒的男性支持を根強く持つ
ほんとうのカリスマがいます。

神門です。

ポエトリーだな、韻踏んでないし、フローが、、、
「これを果たしてラッパーというのか。」
そんな軽率な問いには敢えて答えませんが
普通の男性は 迂闊に聴いていると 
 余裕でヒップホップでディープな世界に吸い込まれていきます。

なので、この記事で初めて神門という男を知った方は気をつけて欲しいです。
特にここで取り上げる最新作品はホンの序の口で
まさかファーストアルバムなんて聞いた日には
神門の虜になってしまうでしょう。(1,000円なので買ってみてほしい)
三日月
神門
Da.Me.Records
2007-09-08


ラッパーが評価されるとき、ロックやレゲェじゃあるまいし
まさかトラックを褒める人はいません。
フローは発明した人が褒められるべきですし、声質は褒められても初めだけです。
ラッパーが真に評価されるのは「リリック」だけです。
むしろ無音でも、文字だけでも食らわせることができる詩人なのです。

その点で神門は抜群です。

そして神門の詩の、どの点が良いのか。
神門の場合は「男(人間)の弱さをこれでもかと赤裸々かつストレートにぶつけることが出来る強さ」なのです。
誰しもが虚勢を張りたいことに真正面からぶつかり、ラップし
その恥部を個性として出してしまう「強さ」なんです。

思春期の恋愛、失恋、苦しかった過去。
多くの男が経験したであろうほろ苦いエピソード、そのままの鮮度でフラッシュバックさせてくれます。
初めて付き合った彼女が結婚相手だと思い込めるピュアな男子学生であれば
別れるときはこの世の終わりかと思うほど泣いたことでしょう。
そして、自分が弱った時(酔った勢いで)、連絡してしまう弱い自分がいたはずです。
そんな残酷なまでの誰にも言えない「あるある」を神門は恥ずかしげもなく吐きます。

「元カノへの執拗なまでの愛の歌」が神門の作品の7割を占めます。
後の3割は「将来の不安」と「生きていく上でのもどかしさ」です。

ファーストアルバムはまさかの全曲ラブソング。
すげぇ暗い。

ここからずっと元カノの「すず」と付き合ったり、別れたりの連続を繰り返します。
そしてある時やっと、吹っ切れたかのように
めちゃくちゃ振られます。(何回振られてるか分からないけど)
神門/上弦下弦」(これは記事にしたなぁ)

神門/上弦下弦について(2018/2/9)

上弦下弦
神門
半袖VIBES
2012-11-14


そしてまさかの新しい彼女の出現かと思えば、結婚
神門/Azalea

Azalea
神門
半袖VIBES
2015-06-17

そして最新作。
神門/エール

エール
神門
半袖VIBES
2018-11-07


Azaleaとエールの前に「神門/親族」というアルバムがあったのですが
敢えてここは飛ばして、
親族
神門
半袖VIBES
2017-06-21


神門の元カノ話が終わってしまった今、
神門」というラッパーはどう展開していくのかファンは固唾をのんで待っていました。
だって、神門の七割は元カノです。
神門だって人の人生の浮いたや沈んだは「誰と付き合うか否か」とさえ言っていました。
だから、結婚した今、
ファンは神門というラッパーが終わるんじゃないかとすら危惧しました。

そんなことは杞憂でした。
前述で3割ほどしか、恋愛以外の曲がないと書きましたが
駄作というわけではありません。
胸が熱くなるストーリーテラー、感動で目頭熱くなる展開。
やっぱりリリックが命のラッパーなだけあって、余分な言葉を省いた
ストレートな表現が突き刺さります。

神門/栞」の中に「いのち」という名曲があります。

栞
神門
半袖VIBES
2009-09-16


これはフィクションだと思われますが、涙なしには聴けません。
実体験じゃないリリックも、当事者に投身できるほど
小説に近い臨場感でのリリックです。
「漫才」

コンビ名どうしようか。
誰しもが好きなもんの名前にしようや。
例えば何がある?「例えばさ。」
いつもいた右側へ
ネタ帳に初めてネタ以外を書く
なんてらしい書き出しで始めたいんやけど
俺のネタ帳はネタ以外で溢れている
部屋、日記感じたことを全てをそこに
お前ですら読めない字で書かれているそれらは
読めんほど斬新でオリジナルなアイデア
字の書かれ具合、斜め加減でテンポまでわかる
まるで譜面、俺らだけのハーモニー


次あかんかったら解散や
この言葉は勝った者のみ世の中に残せる
負けたものはその言葉を口に封じ
セリフと同じ、どこにも発せられることなく、去るしかなく
俺達には明日しかなく、今日がなかった。
時に今ですら俺らに追いつかなかった。
ネタにならんのやったら、もうどんな感情に抱く必要がないんじゃないのかと
思うほどに狂った。


テレビでなんかに耳にする下積み時代
そこで語られる貧しさが目の前にあり
何もかも順調にいかない日々こそが
売れるための順調な毎日に思えて
状況が変わらんと昨日は過去にならない

公園の電灯は俺らよりも高い
スタイルが固まりつつある中
なんも変わらん状況 売れんコンビが俺らに定着していく
ぐずついた飲み会で
「先帰るわ」の感じで
突然切り出した「芸人辞めるわ」
「ライムサワーおかわり」に呼応するテンションで
「じゃぁ俺も」と返答した俺
あん時の俺らは正しかったんやろうか
それはそのあとの俺らが決めることやろうけど
できることなら選択をする前の舞台にたつ俺らに決めてほしいねん


ラストライブ来てくれたお前のお父さん
あそこだけがなぜか妙にライトが当たってて
その表情にお前の横顔を見た
そん時「ほんま終わるんや」と思ってぐっと来た
最後にこの13年間をネタに
漫才を書こうと思って
またスイッチを切り替えて
いつもの汚い字でがりがりと
机に向かう
なんかもうもはや懐かしくさえある
そん時に一つ発見したことがあって
それは俺らの過去も未来も救えそうな発見で
ええか相方よ
13年間を走り書くと
「瞬間」に見えんねん。

売れない芸人のことを歌っています。
時によくラッパーにも同様に例えられます。(芸人の方が親近感あるから)
13年間続けてこれた没頭することを
辞めてしまう寂しさは
中々うだつが上がらないラッパーにも投影出来ます。
その寂しさや悔しさを惜しみなく伝えられるのは
神門というラッパー、人格なくしては可能ではありません。

「ラッパー、芸人」を辞めるだけの歌を聴いただけで目頭が熱くなります。
いやぁ、泣いた。
僕はこの歌を聴いて、何かから逃げてサラリーマンしてる場合じゃないなと
思いましたね。
(サラリーマンするけど。)
「泥濘」
あの頃は泥沼時代でした。
成功者が過去を懐かしく語る
その顔が光り輝いている訳は
今の輝きを再現できるから
俺にとって泥沼は今かもしれない
親族を出した直後かもしれない
足元のぬかるみは泥でしかない
一番深いところは足が付いた先
ファーストっていう響きのみずみずしさは
ファーストアルバムの特融物
次からは作品のタイトルではなく
アーティスト名で中身まで見限られ
三年を費やしたニューアルバム
ひと月も経てば、もう旧作か
縦向きにおかれ、隅に追いやられ
時代の中に埋もれ息もできずに溺れる
リリースを重ねれば重ねるほど
新作が出るというアナウンスが
過去の既成事実の上塗りのようで
新しいニュースなのに古く聞こえる
「まだ出んのか」「まだやってんのか」
出して、売れんかった事実だけが積み重なる
これで食えん現状を変えるどころか
あざ笑うかのようにより濃くする。


発売日、タワレコに足を運ぶ
心持ち頭を下げ、入り口をくぐる
Jラップコーナー、新譜の試聴機
そこに今日出た俺のアルバムはなかった
DISC1に設置されたCDにむかつく
別んとこに淡い期待、店内をうろつく
「しんもん」と読み間違い、サの行にある
K-POPコーナーまで探す始末
看板にサインするように
用意してた筆ペンが歩くごとに太ももをつつく
ツイッターに上げてもらう写真を考慮し
ジャケに合わせ着ていた服に冷汗がにじむ
作品への一番残酷なレスは
批判中傷?無関心
リリース日を誰よりも待ちわびていたのは
作者だったという恐ろしい皮肉
CDが売れん時代なんていうけど
買われるほどのもんを作れない時代だ
なんて息巻いては制作に打ち込み
作り上げた作品の結末がこれ
穴を埋める新人のぴかぴかのEP
俺のこれは誰のためのいつのためのCD
希望が消えて、絶望するのではない
希望が残り、絶望に変わるのだ


テーマがテーマだけに売れんとは思ってた。
けれど買ってくれる人は評価してくれると
結果出した後の数やレビューからいうと
売れん上に、経験ない低評価
「ぼったくり」、「損した」
「三年でこれ?」「ファン辞める」「さよなら」
「完全に終わった」
聴きもせずに、ヤジるだけの罵声ではない
ずっと聴いてくれてた人たちの声
信用で物を売って、信用をしてたものを
売るだけだけじゃ共依存だ
求められた構成でライブを組み
内側に成長が閉じる恐怖心
俺が俺の曲を良いと感じるのは
自ら作ったものからかと暗中模索
死んでから売れた人のエピソードを
励みではなく、焦りとして聴きたい
信じてくれた人への恩返しは
信頼を返すことではなく
その人が信じてくれている以上に
自分が自分を信じることだ
新しさの産声は非難にさらされ
定着する直前にピークを迎える
人のまねではその人を超えられないように
俺のまねで生んだ過去作の模倣品

もう前作の反省の歌を出します。
神門/親族

親族
神門
半袖VIBES
2017-06-21


この当時の評価、コメントが神門をどん底に落としました。(僕はそこまで酷くはないと思ったけど)
しかも本気で「この音楽で売れたい」という気持ちがひしひしと伝わります。
若さや青春の1ページだけでラップしていません。
本当に人生をかけているラッパーの言葉です。
もう泣けるほどかっこ悪く、タワレコでCDを探すシーンは
ラッパーとして底辺な姿をよく表しています。
でも、それを作品として語るラッパーはとてもじゃありませんがいません。
それは弱いからで、神門の恥を芸術に変えてしまう強さが光った曲でした。
とても力強い作品でした。
「エール」

テレビからは先に売れた友人の声
知ってる?妬むと体が熱くるなるんだ
耳をふさがずに平静を装うのが
唯一できる強がりという情けない強さ
音楽を始めたころのテレビのスターは
皆、俺よりも年上の人たちばかりで
俺も年を重ねれば、そこに行けると
階段を駆け上がるイメージ、日々やイメージめくりめく
この前酔っぱらっていったカラオケ屋で
ヒット曲を歌う本人映像のYUKIが
俺よりもはるかに年下で
売れるんやったらとっくに売れてるんかなと急に弱気になる


これだけは聴いとけ、日本語ラップ100選
オファーを受けた記憶など一切ないが
持ち前の自意識からパラパラとめくり
自分の名前を発見できず、くそ雑誌かと閉じる
インタビューで友達が答えてて
俺の名前出してへん?顔から火が出るほどのスケベさ
ちゃうねん、俺が俺やから俺がいつも見えてるだけで
人から俺なんて見えてないねん


後輩のラップに俺っぽさを感じ
それをひそかに支えにしている自分は惨めだ
出発点をいちいち気にしているのは
どこにもたどり着けていない負け犬だけだ


よく過去を愛すことを愚かなように言われるが
俺は恐れずに愛したい
未来の方もいずれ自分もなる過去を愛せない人も
愛情を素直に受け入れるだろうか


あの恐怖に満ちたステージに帰るのだ
ここまで勝手にライブを休止しといて
今更待ってる人のためだなんて言わない
部屋でできることが天井にあたったのだ
なんで作品出してんのに、ライブしてないだけで
引退した空気が流れるのかわからない
生で伝えてこそ?、生って要素を足さないと
震わせれないリリックだけなんとちゃうん?

同窓会で昔
音楽の方はどう?と気を使って話題振りをしてくれた友達が
今じゃ気を使って、その話題にならんようにしてる
そんな時にわかりやすい成功に飢える
お前らが芸人やった時
一番残ってる思い出って何?
その思い出に勝てよ
辞めたんじゃないやろ?
色んな要素重なって、夢中になれるもん変えただけやろ
なんであれが売れんねん
顔がええだけやん
世間の無反応がまたものを書かせる
あらゆる世界でくすぶってる人たちよ
いいものを作ろう。
この歌を聴き終わるころには、「つーっ」と涙が流れます
なんてかっこいい曲なんでしょうか。
「やりたいことやるだけ!」「ツレと酒をのんで、遊ぶ」
「俺は俺だけ!」とか「えい!」ってちゃらちゃらラップしている奴らが
腰から崩れ落ちるほどに荘厳でラップをやる意味に真正面から立ち向かっています。
そのラップをやる意味とは「売れる」という意味で
それは自分が良いと思った作品で、世間を納得させたい。という鬼気迫る感情でした。

歌詞を読んで、それでも心が揺さぶられない人(特に男性は)
ラッパーに向いてないので
ロックとかに転向することを進めます。

最後、神門のおすすめアルバムは(全部ですが)
特に3つ挙げるのであれば

1「神門/苦悩と日々とど幸せ

苦悩と日々とど幸せ
神門
半袖VIBES
2014-09-17


神門が彼女と別れ、新しい彼女を見つけ
幸せな生活を手に入れると同時に、「うだつ上がらないラッパー」と向き合うアルバムです。
ラッパーを辞めて、公務員を目指す神門の曲に誰しも共感し
号泣不可避です。
神門至上最高傑作です。

2「神門/こころ

こころ
神門
半袖VIBES
2008-12-17


2枚目の作品です。
1枚目の全曲ラブソングから反省の作品です。
表明から始まる意気込みが強い、ラップでバリエーションがある初期作品です。
神門もまだ若いので結構息巻いてます。ディス曲もあります。
「さて、どう生きようか」8分越えの作品で、
ラッパーを辞めるか続けるかもう悩みに悩んで、、、あれ?(さっきも同じこと書いた)
3「上弦下弦

上弦下弦
神門
半袖VIBES
2012-11-14


もう既に記事にしているので、あれですが
ここでも彼女に振られ、振られ
まさかの元カノの歌だけで10曲中4曲占めます。
この中には不可思議wonderboyへのトリビュート作品も収録され
圧巻の作品を出しています。
(ただ、神門不可思議wonderboyに遭ったことあるのは1回だけという恐ろしい話)

日本語ラップオタク

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